プロフェッショナル口腔ケアの必要性
歯科衛生士による専門的な口腔内ケアは、高齢者の食べる楽しみ、運動機能の向上、誤嚥や窒息の予防につながります。また咬むことは認知症予防にもなるとも言われています。したがって、義歯を入れたり、むし歯を治療したりして口腔内の環境を整えることは、高齢者の健康寿命も延ばすことにも結びついてくるのです。
そして最近の研究では、プロフェッショナルな口腔内ケアを行うことで、インフルエンザの発症をおさえる効果もあると言われています。こちらのページでは、プロフェッショナル口腔ケアの必要性についてご説明します。
プロフェッショナルケアとは
プロフェッショナルケアの頻度
歯科衛生士によるプロフェッショナルケアは、週1回~月2回がオススメです。日常的にはケアすることが難しい歯面清掃。そのため、口腔内機能の維持や回復を図るためのリハビリテーションが必要となります。誤嚥性肺炎の予防を目的とした口腔内ケアなどを歯科衛生士が週1回~月2回、施設やご自宅に直接お伺いして専門的なケアを行います。
【プロフェッショナルケアの内容】
- むし歯、歯周病の状況を診て、適切な口腔内清掃やアドバイスを実施
- 日常的に清掃することができない部位を、専門的な技術でケア
- 口腔内機能の維持や回復を目的とした口腔ケア
- 食事を摂るための支援
- 入れ歯専用洗浄を用いた入れ歯の清掃・洗浄
- 認知症などで口を開かない患者様への口腔内ケア
プロフェッショナルケアの目的・効果
施設で暮らす要介護者の方にとって、食事は楽しみの一つです。また重度の認知症の方は、歯が少ない、義歯を入れていないなど咬むことに問題がある方の割合が多いと言えます。神奈川歯科大学の研究でも「歯をほとんど失い、義歯を使用していないと認知症のリスクが最大1.9倍になる」と報告されています。認知症のほかにも歯のない方、義歯を入れていない人は、窒息のリスクが大きいこともわかっています。
【プロフェッショナルケアの目的】
- むし歯、歯周病予防などの口腔内疾患、感染症の予防
- 口腔機能の維持・改善
- 誤嚥性肺炎の予防
- 会話などコミュニケーション機能の回復
- QOL(生活の質)の向上
口腔ケアには2種類の目的があります。
介護口腔ケアにおいては、介護を受ける人を受容し、傾聴と共感でコミュニケーションをとることを骨子としています。
機能的口腔ケア口腔機能(笑う・話す・食べる・表情を作る・呼吸する)を維持・増進させることは、歯科疾患の予防だけでなく、認知症の予防にもつながると言われています。舌体操、顔面体操、唾液腺のマッサージなど口の周りの筋肉を集中的にトレーニングすることで摂食・嚥下障害を防ぎ、機能を活性化させます。 |
器質的口腔ケアブラッシング、プラークを清掃することによりむし歯や歯周病を予防します。それにより誤嚥性肺炎や呼吸器官感染を防ぎます。口から異物が侵入したときに働く防御機能が、口腔内が殺菌で汚れていると弱まってしまうため、インフルエンザウイルスや風邪にかかりやすくなってしまいます。 |
口腔ケアの効果
ケアを行うことで、口腔内機能の向上、食べる楽しみ、運動機能の向上、低栄養予防、誤嚥や窒息の予防などの効果があります。
口腔内の状態が良好になると、唾液が出やすくなり、咬みやすくなる上に食事もおいしく感じます。物を積極的に口に入れようとする高齢者も増え、食事の介護が軽減され、口臭もなくなります。その結果、プロフェッショナルケアを行うと生活の自立や、生きる意欲の向上につながり、高齢者がいきいきと暮らせます。
歯科衛生士によるプロフェッショナルな口腔内ケアは、高齢者の健康寿命を延ばす効果もあると考えられています。
口腔ケアでインフルエンザ予防
施設にインフルエンザウイルスの侵入&蔓延防止
インフルエンザは感染症の一種です。施設内へのウイルスの侵入を防ぎ、もしウイルスが入ってしまったら感染者を隔離して蔓延を防ぐことが重要です。
インフルエンザの感染は、くしゃみや咳などによる飛沫感染と、感染者が触れたものを別の人が触わる接触感染があります。さらに感染者と同じ空間にいる人が、ウイルスを吸入して起こる飛沫核感染も状況によっては成立します。
そして口は細菌やウイルスが入いりこむ入り口の一つです。手洗いうがいもウイルスが口を通じて入らないように予防する対策ですが、さらに口腔内環境を清潔に保つことも重要なのです。
新しい予防法の一つとして、適切な口腔内ケア
インフルエンザの感染・増殖・拡散のメカニズムが解明される中、適切な口腔内ケアによる、口腔内の細菌と、最近由来の酸素活性を減少させていくことがインフルエンザの予防には有効的だと考えられています。
2003~2004年冬季に実施した“適切な口腔内ケアがインフルエンザにどんな影響を及ぼすか”の調査では、歯科衛生士が1週間に1度口腔内のケアを実施した『口腔ケア群』は、ウイルスの感染や増殖に重要なノイラミニダーゼやプロテアーゼ活性の低下が確認され、インフルエンザ発症者はわずか1名。
それに比べ、自分で口腔内ケアを行ったグループ『対照群』はインフルエンザを発症した人数は9名と多かったのです。
まだ認知されていない「口腔内ケアでインフルエンザ予防」
口腔内ケアとインフルエンザは深い関わりがあります。プラークコントロールが良好で口腔内がうるおっていればインフルエンザの予防は期待できます。しかし、このことについてくわしく知っている患者様はまだほとんどいません。当グループでは、訪問歯科診療でもこのことを患者様やご家族様、そして施設従事者様に説明し、専門的な口腔内ケアをするうえで、インフルエンザ予防にもさらに努めていきます。