1)口腔の特殊性と口腔の細菌
口腔は、温度、湿度、栄養供給、複雑な形態、環境などあらゆる点において、微生物が繁殖しやすい条件がそろっていることから、呼吸器感染症をはじめ全身の疾患の発症と密接に関連しています。それゆえ口腔の細菌のコントロールは極めて重要です。
2)口腔ケアとは
最近、口腔ケアという言葉が歯科領域だけでなく一般の医療、看護、介護の領域で盛んに使われるようになってきました。このことは、医療や福祉の現場で口腔ケアが必要とされ、実践されている証でもあります。この口腔ケアは、広義には口腔のもっているあらゆる働き(摂食、咀嚼、嚥下、構音、審美性・顔貌の回復、唾液分泌機能等)を健全に維持する、あるいは機能の障害がある時、それをケアすることを指します。一方、口腔衛生管理に主眼を置く一連の口腔清掃と義歯の清掃を狭義の口腔ケアとしてこの言葉を使うときがあります。
3)専門的口腔ケア
専門的口腔ケアは様々なケースに対応できる能力を持った歯科専門職がケアを必要とされる方の身体、精神的状況や環境に配慮する形で口腔のケアプランをたて、実施する口腔ケアを指します。
4)なぜ口腔のケアが大切か
口腔の細菌数は生活行動や生理的作用によって1日の内でも大きく変動します。長期臥床の入院患者さんや要介護者にとって口腔のケアがおろそかになれば、歯垢に加え、痰が舌と口蓋にこびり付き、細菌数が最大に達します。さらに義歯が衛生的に管理されていなければ、細菌の温床となってしまいます。このように感染や病気の原因となる細菌を減少させることは、疾病の予防につながります。また口腔内をきれいに清掃すると食事がおいしくなったり、さっぱりして生活の質が高まります。
5)口腔リハビリ
脳血管疾患などの影響で口腔機能が低下してる場合や日頃、口を使わないことによる廃用性変化が起こっていることがあります。このような場合、口唇、頬、舌を積極的に刺激し、口腔機能を高めたり、飲み込みを改善したりします。このことを口腔リハビリと言います。
6)歯科治療と口腔のケア、口腔リハビリの組み合わせ
歯科治療と口腔のケア、口腔リハビリはより健康な口腔を回復するために非常に大切な組み合わせです。またケアはご自分で行うセルフケアと歯科衛生士による専門的なケアがあります。在宅医療においてはご自身によるセルフケアが難しいケースがほとんどです。口腔リハビリでも同じことが言えます。それゆえ、口腔の専門家がかかわり、どのような口腔のケアが必要か、それぞれの分担をどうするかをプランニングすることが重要です。
7)高齢者の健康を脅かす誤嚥性肺炎
肺炎は日本における死因の第3位です。肺炎の発症率は加齢とともに増加し、肺炎で死亡する人の大部分は65歳以上の高齢者であり、年々増加傾向にあります。また、肺炎のために入院を余儀なくされ、長期の安静臥床を続ける間に廃用症候群が進行し、様々な合併症を引き起こし、結果的にさらに進行した要介護状態となる危険性もはらんでいます。すなわち、肺炎は高齢者の罹病率や死亡率を上昇させ、医療費や介護費用を増大させる大きな要因です。肺炎を発症した高齢者の多くは、食事のときにむせこんだり、食べ物が喉につかえたりするという症状がなくとも、夜間睡眠中に唾液を下気道や肺に不顕的誤嚥していることがわかっています。肺炎になると、栄養や免疫機能がさらに低下し、繰り返す不顕性誤嚥のために肺炎が反復、重症化し、ついには死に至ることも稀ではないのです。
8)歯ブラシの選択はたいへん重要
長年にわたって療養されている方の場合、適切に口腔清掃がなされていなかったり、う蝕(むし歯)と歯肉炎が広範囲に認められることが少なくありません。長い間ブラッシングを行っていない場合、歯肉がひじょうに脆弱(弱く)になっており、ブラシの選択を間違えると大きなトラブルを起こすことがあります。この様な時は、衛生的な軟毛のブラシが適切です。さらに最初は力を入れ過ぎたり、長い時間のブラッシングは避けるべきです。歯肉の炎症の改善具合を見ながら、普通の硬さのブラシに替えていくことが可能です。また柄が太くなった持ちやすい歯ブラシもおすすめです。また歯ブラシの後、口をよくすすぐことも大切です。
9)口腔リハビリによって口腔機能や嚥下機能の向上を図ります。
脳卒中等の後遺症、また廃用(使わないことによる機能の変化)によって、歯と口唇、頬の動きの調和が崩れたり、食べたものをうまく飲み込めない方が、増えています。このような場合、口腔機能の向上や嚥下機能を改善するような口腔の体操や口腔リハビリが大変有効です。歯科訪問診療の中でも、症状によって口腔機能訓練や摂食・嚥下訓練も受けることが出来ます。
10)在宅歯科医療について取り組んでいること
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医科歯科連携医科の先生方と相互に情報を交換し、安全な医療を提供するための連携が始まっています。 |
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多職種連携ケアマネージャー、看護師、言語聴覚士、介護福祉士など、医療や介護の専門家との連携も進んでおります。 |
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